2012年5月24日木曜日

資源高受け、商習慣変更に動く建設業界

鋼材が大幅値上がりするなど資材高騰が建設業界全体に重くのしかかっている。今春、激しい販売競争で値上がりしないと言われたセメントも大幅に上昇した。

こうした現状を受けて、国土交通省は6月に「単品スライド条項」の発動を決めた。国が発注する公共工事で鋼材などの資材価格が見積もり段階よりも大幅に上昇した場合、建設業者が工事代金にコスト上昇分の一部を上乗せできる仕組みだ。だが「単品スライドの実質的な効果は薄い」とゼネコンの資材担当者は漏らす。

単品スライドは、資材の値上がり分が総工事費に占める割合が1%を超えた場合に、超えた分を国が補てんする制度。仮に総工費100億円のプロジェクトならば、資材の値上がり分だけで1億円を超えた分のみが適用範囲になる。このため単品スライドを適用しても「実際に補助の対象となる金額は少なく、ゼネコンの負担は軽減されない」という見方が大半を占める。

それでもゼネコンが単品スライドを歓迎するのは、公共工事価格に資材高を転嫁することを国が認めたことで、「民間工事でも施主に価格転嫁を求める道が開けた」ためだ。これまで民間工事は公共工事以上に施主への価格転嫁は難しいと考えられてきた。だが今年9月、大手ゼネコン各社は着工済み物件への原燃料高転嫁を求めて施主と交渉を開始した。

一方、鋼材や生コンクリートなどの建設資材メーカーも、契約期間の短縮など、変動するコストを迅速に価格に反映するための仕組み作りに動き始めている。止まらない資源高を受けて、従来の商習慣を変更しようとする動きが建設業界全体に広がっている。