2015年3月9日月曜日

ITの帝国

新たな意味で米国の経済的優位が現出しつつあるもう一つの場、それは文字通り「情報」のビジネスである。今日では、日本の国会質疑などでもひんぱんに使われるようになった「IT」(情報技術)を次々に開発していくビジネス。

そのチャンピオンが、日本流にいえば偏差値トップのハーバード大学を、仕事が忙しいと中退し自前のビジネスを興した、マイクロソフトのビル・ゲイツである。パソコンを動かす基本ソフトウェア(OS)「Windows」によって世界の情報ビジネスの頂点に立つ、米国の、したがって世界一の大金持ち。

あまりに強大になったマイクロソフト帝国に対し、米国司法省がついに独禁法違反による摘発に乗り出し、企業分割に追い込もうとしている。

IT開発の先進ビジネスは、もちろんマイクロソフトに限られない。軽く小さくなりながら、かつての大型マシンをはるかに上回る性能へと進化を続けるコンピュータの中枢機能を、指一本ほどの大きさに詰め込んだマイクロプロセッサーでは、やはり新興企業のインテルが世界的覇権を確立した。Windowsと合わせて「ウィンテル」なる新語が、情報分野の技術体系を支配するものとしてでき上がっている。

ITはしかし、それを生み出す情報分野の巨大企業をものみ込みながら、米国経済界を急変させつつある。先述した金融ビジネスにとどまらず、すべての産業、すべての企業が情報機能を軸に変身しつつある。

情報産業界では、二〇〇〇年の年明けの、インターネット最大手AOLによるメディア界の巨人タイム・ワーナーの吸収合併が、新たな激変の端緒とされている。
二〇〇〇年三月には、ネットワーク機器メーカーの「シスコシステムズ」が、株式時価総額で世界一のマイクロソフトを抜いた。パソコンソフトから通信ネット・インフラヘの、覇者の交代を思わせる。