2015年6月8日月曜日

市場開放の観点

これに対し厚生省からの九九年度の補助金総額は一億三四六三万円、委託費が三三九六万円。補助金の内訳は、食品衛生指導強化費や外国人研究者の招聘事業向けなど。同社団は一九六〇年から食品衛生指導員制度を設け、全国の約六万五〇〇〇人のボランティア指導員が地域の飲食店などを回って食品の衛生管理を指導しているが、この指導経費が含まれる。

委託費は、食品の安全性を巡る相談事業や発展途上国の食品衛生行政専門家の研修事業向けなど。補助金・委託費とも、依然として既存事業向けのバラマキ型で、食品衛生管理や検査の改革に向けた新しい発想に欠ける。同社団は職員数七二人に対し役員が六九人もいる。これは全国に支部が五七あり、それぞれの支部長ポストに理事を置いているせいでもある。結果、厚生省OBは計五人と相対的に少ない。ただし、常勤理事五人のうち、最上級の副理事長・専務理事は元厚生省生活衛生局長である。

同社団は、指定検査機関として既に競争状態にあるのだから、公益法人である必要はない。営利法人化すべきであろう。JISやJAS(日本農林規格)に象徴される「規格」や「品質表示」に加え、法令や規制により定めた「検査」や「検定」「認定」、これらは「官」が所管の公益法人を動かして自らの許認可権限と利権を積み上げる「装置」になる可能性が、前述した事例から垣間見える。煩雑に過ぎる「検査」や「認定」「表示」手続きは、業者にコスト高と手間をもたらし、意欲を冷やして生産性を阻害する。「果たして本当に必要な規制かどうか、行き過ぎていないかどうか」が問われる。

他方、それは貿易相手国からみれば市場開放に逆行する非関税障壁となる。「検査」の類いは、いまはことごとく廃止もしくは簡素化し、検査機関は営利企業化する時期に来たのではないか。国はグローバルな市場開放の観点からせいぜい最小限必要な基準あるいは原則を決める、これに沿って業者が自らの責任で製品の安全性などを自己認証していくそういう形が、二一世紀にふさわしいのではないだろうか。