2014年4月17日木曜日

糖尿病患者は免疫力が落ちる

靴擦れがきっかけで運動習慣が崩れた悲劇(男性・初診時四八歳)Lさんは四〇歳の時に集団検診で尿に糖が出ていることを指摘され.四二歳で糖尿病と診断されました。近医に二週間程入院し、血精の自己測定法を習い、少量のインスリン注射による治療が始まりました。ニヶ月ほどインスリン注射を行いましたが、自己測定した血糖値が低かったので自己判断でインスリンを中止し、しっかり運動することで血糖コントロールを行いました。水泳か好きなので暇をみつけては泳いでいました。

四六歳で左足静脈瘤の手術を行いました。手術直後、左足をかばって歩いたために右足底部に靴擦れができ、徐々に大きくなりました。糖尿病患者は免疫力が落ち、靴擦れなどができると治りにくいと教育されていましたので、細菌感染が心配で水泳をやめ、靴擦れが痛いので歩く量も少なくなり、運動をするという生活習慣が完全に崩れました。靴擦れが心配なので病院を受診しなくてはと思っている矢先に転勤になり、転勤してすぐに入院にでもなったら生徒や同僚に申し訳ないと思い受診を取りやめました。

運動量が極端におちているにもかかわらず、奥さんの手づくりケーキを間食するという悪い癖がつきました。念入りに消毒しているにもかかわらず靴擦れは大きく、深い傷になっていきました。傷が深くなればなるほど長期入院と診断されることが恐くて病院を受診できなくなり、家族や友人の勧めも拒否して二年間消毒だけで頑張りました。運動はしない(出来ない)、間食はするという生活では靴擦れかよくなるはずもなく、担任していた生徒の卒業式の翌日(九九年三月、四八歳時)当科を受診し、入院となりました。傷は三×四センチ、骨が見えるほど深く、血糖値は五〇〇以上になっていました。

早速インスリンによる糖尿病の治療と深い傷に対する治療を併行して行いました。幸い傷が深い割には細菌感染がなく、順調に良くなりました。靴擦れというちょっとしたきっかけで運動という生活習慣か完全に崩れ、そこにケーキの間食という悪い食習慣が加わったために糖尿病か悪化し、足の切断一歩手前までいってしまった症例です。周囲の人達への過剰な気配りが受診を遅くしていますが、入院時に教育された「傷は念入りに消毒するように」という指示を忠実に守っていたために傷に細菌感染がなく、足の切断をまぬがれた幸運な例だともいえます。