2015年11月9日月曜日

実験心理学で証明された事実

昔から「あばたもえくぼ」などといわれたように、私たちは実際の刺激を、そのあるがままの性質でではなしに、自分がそう見たいと思う性質で見てしまうことがある。またある場合には、見たくない刺激は、眼前にあっても見ないことがある。この面の研究は少しおくれていたが、やっと1950年代になって世界的に盛んとなり、「あばたもえくぼ」の世間的常識が、実験心理学でも証明されることになった。たとえば次のような実験である。

被験者は食欲盛りのアメリカの若い水兵で、彼らは三つのグループに分けられて知覚のテストが施行された。これらのグループのうち一つは、このテストを食後1時間後に受け、ほかの一つは4時間後、残りの一つは食後16時間後に受けた。テストの方法は、あいまいな形の図形を瞬間的にスクリーン上に投影し、それが何であったかをいわせるというものである。スクリーン上には実際には雲形のもやもやしたものが呈示されるだけなのであるが、実験者は「机の上にあるのは何でしょうか」とか、「絵の中の人たちは何をしていますか」などの暗示を与え、被験者が雲形のものを何に見るか調べたのである。