2012年6月21日木曜日

DRAM市況、上昇基調に早くも息切れ

代表的な半導体メモリーであるパソコン用DRAM。上昇基調をたどっていた相場が早くも「息切れ」している。大口価格は月2回の交渉が一般的だが、7月後半・8月前半と2期連続で値下げ決着した。8月後半分も一段安で決まる公算が大きい。

パソコン用DRAM価格は昨年1年間で約85%値下がりした。米マイクロソフトの新基本ソフト(OS)「ウィンドウズ・ビスタ」需要を当て込み、メーカー各社が増産に走ったものの、需要が予想ほど伸びず供給過剰に陥ったためだ。このため昨年後半から半導体各社は軒並み赤字に陥った。危機感を抱いた複数メーカーが年初に減産を実施。その効果が表れ、4月後半以降は上昇基調をたどってきた。メーカーの採算ラインは1ギガ(ギガは10億)バイトのモジュール(複合部品)で1個24ドル、単品を表す1ギガビットでは2.7ドルといわれているが、7月前半時点でモジュールは22.5ドル、単品で2.5ドルと採算ラインの一歩手前まできていた。ここにきての下落で一転して採算ラインは遠のいている。

パソコンの需要は堅調だ。世界的には前年比2ケタの伸びが続いている。米国や日本では1ケタにとどまるが、ロシアや東欧、中南米など新興経済国の伸びがそれを打ち消している。ただ、ここにきて欧州や中国では減速感が台頭してきた。欧州では一部パソコンメーカーの在庫が積み上がってきたほか、中国でも一時期の勢いは影を潜めている。パソコンメーカーも先行きの生産計画に慎重になっており、これまで値上げを受け入れてきた反動もあって、値上げへの抵抗を強めている。

9月から10月にかけては欧米のクリスマス商戦向け調達がピークを迎えるが、最近では「例年ほど盛り上がらないのではないか」(パソコンメーカー)との見方が強まっている。原油高騰は一段落したものの世界的な景気の先行き不透明感が強く、個人消費にも影響が出るとの「不安ムード」が広がっているためだ。

上位メーカーは微細化技術を進めており、順調にいけば年後半には歩留まりの向上が見込まれる。微細化は生産コストの引き下げにもつながるが、同時に供給圧力も強まることになる。現時点でも供給過剰感が強いだけに、需要次第では一段の下げにつながりかねず、業界再編が一気に加速する可能性は十分ある。