2015年4月8日水曜日

商人たちの間で布の品質を検査するために常用していた

最も倍率の高いものでは約三百倍の倍率を有していたが、この倍率は現在の顕微鏡にそれほど劣るものではないといえる。それにしても、反物商であった人物がどうして顕微鏡を作ったのであろうか。彼の特異な才能や趣味によって説明することも可能であろうが、その動機を、当時、商人たちの間で布の品質を検査するために広く使われていた虫メガネと結び付ける説がある。いずれにしても、虫メガネを常用していた商人はたくさんいたはずだが、自分で顕微鏡を作り、微生物を研究した人物は彼以外には知られていない。

しかしレーウェンフックにしても、若いときから、レンズの持っている、像を拡大して見せる性質に親しんでいなかったならば、顕微鏡を作るというようなことを考えなかったかもしれない。彼がどのようにして彼の顕微鏡に用いたレンズを作ったかは、現在でも謎とされている。レーウェンフックにとって、微生物は数多くの観察対象の一つに過ぎなかった。

彼の周囲にいた人々も、レーウェンフックが見いだした微生物が病気の原因になるのではないかなどと想像したこともなかったようである。つまりミアスマとして想像されてきた病原体と、レーウェンフックが発見した微生物とが結び付けられるための条件が、当時はまだそろっていなかったということになろう。しかし微生物の存在が、視覚を通して明らかになったことには画期的な意味があったはずである。百聞は一見に如かずということわざがあるが、レーウェンフックの成し遂げたことはまことに偉大だったと思う。