2012年9月3日月曜日

生命的感情の層のうごき

うれいの人はこうして生命的感情の層のうごきがとどこおっているために、ものをみても人に向ってもいきいきした感付加わきでない。風物は美しさがなくねむたげで、自分からはなれて遠くへしりぞいてしまった風にみえ、人に対しては愛も憎しみもわかない。

ただわずらわしさだけがある。なにもかもうるおいがなくて死んだように見える。これが彼らの訴える「無感付」である。ところ、か生命的感情の上に位する心情的感情の方は、よどんでうごかぬこの武木感情をたんとかしてひきたたせようとつとめ、景色を美しく思おう、人にもっと活発にはたらきかけよう、さえた新鮮な気分になろう、と自分にいってきかせるのだが、もともと自分が生命的感情に背負われているのだからどうしようもない。「私はなにも感じられなくなってしまった」というなげきは、そうしたどうにもならぬ心情的感情のなげきにほかならない。