2012年7月24日火曜日

食料自給率からみえるもの

農水省が2007年度の食料自給率をまとめた。カロリーベースで13年ぶりに上昇し1ポイント高い40%となったが、生産額ベースでは2ポイント下がり66%。パン原料などになる輸入小麦価格の高騰でコメ消費が伸びたのが影響した。カロリーベースでの自給率向上は好ましいことだが、生産額ベースでの低下要因に今の農業が抱える問題点が凝縮されている。
 
カロリーベースでの自給率上昇の要因は、コメ消費の伸びのほか、国産小麦やサトウキビなど砂糖原料、春植えのジャガイモの豊作が寄与した。これに対し、生産額ベースの低下要因はコメや主要野菜の卸値下落に加え、畜産物生産に必要な輸入飼料の高騰に伴い、畜産物の計算上の自給率が下がったためだ。

コメや野菜の卸値下落はいずれも需給緩和要因に負うところが大きい。コメは農水省が需給調整への直接関与をやめて減反が進まなかったのに豊作が重なった。輸入小麦の高騰がなければ消費減退が進み、年明け後の卸値の反発も弱かっただろう。野菜も前の年が天候不順で高騰した反動もあるが、内需減少が進んだのが影響した。

農産物、とりわけ野菜は作柄が天候の影響を受けやすく、需給調整が難しい。今年もコメ、野菜ともに農水省や生産者団体が需給調整策を練ってはいるが、まず主食と位置づけているコメの需給調整ありきで、野菜などの需給調整は二の次という空気が強い。

野菜や果物、花や畜産物は「コメの需給調整の方便」という姿勢が全国農業協同組合連合会(全農)の08年度事業計画の「基本方向」などににじみ出ている。

農水省は輸入飼料価格の高騰をみて、07年度末の補正予算から飼料用米の本格的な増産推進に乗り出したが、これとて昨秋の主食米産地価格の急落などを契機にした、主食米の需給調整対策の色彩が強い。一部の鶏卵・豚肉生産者からは内外価格差があっても品質向上が見込めるため、もっと欲しいという声もある。

今年に入りコメ国際相場の急騰など市場環境も様変わりしているが、コメ卸値急落を受けた場当たり的な対策ではなく、長期的視野に立った飼料米振興策を求める声が多い。そうでなければ自給率向上も一時的な現象になりかねない。