何度か指摘してきたように、日本経済はさながら「モラルなき資本主義」といった様相を呈している。不良債権問題における経営者のモラルハザード、日銀によるCP引受け、あるいは相変わらすのバラマキ型公共事業政策の継続と約二九兆円にまで膨らんだ地方交付税特別会計の「隠れ借金」、いずれも本格的な景気回復がなければ、日本の経済システムの根幹を蝕んでゆきかねない。本源的生産要素市場におけるセーフティーネットの「解体」を放置していることが、こうした状況を作り出す原因となっている。
冷戦型の二分法的思考の枠組みから抜け出られずに、規制緩和と政府介入、あるいは「小さな政府」と「大きな政府」の間で、ただ振り子のように振れているだけでは、泥沼にはまってゆくだけだろう。本源的生産要素市場の安定性を取り戻すには、何よりも将来不安を取り除き。崩れつつある制度の信認を回復させることが優先されねばならない。
セーフティーネットの再構築を起点とする制度改革が成功するかどうかは、いかにして歴史的な公共的課題に対応して、人々の自己決定権を高めることができるか否かという点にかかっている。もちろん市場原理主義はこの条件を満たすことはできない。規制緩和や「小さな政府」を目指す政策を追求すればするほど、人々は自己決定の領域を失ってしまうからである。強調したように、〈協力の領域〉が組み込まれてはじめて〈競争の領域〉も安定的に機能する。言い換えるなら、人々が自己決定権を確保するには、社会的共同性に基づく制度やルールが不可欠であることを意味する。
つまり、セーフティーネットと連結する形で社会的に公正な制度やルールが存在して、はじめて人間は、それを目安に自分の人生設計=主体的選択をなしうる。そのためには、市場や社会の歴史的変化に応じて、絶えず自己決定権を高めるために社会的共同性に基づいてセーフティーネットを張り替え、それに連動して制度やルールを変更してゆかねばならない。
もちろん、こうした考え方は明確に中央計画型社会主義も拒絶する。理由は簡単だ。それが、権力の肥大化によって人々の自己決定権を抑圧する体系だからである。つまり、セーフティーネットに連結する制度改革という知的戦略は、完全競争状態をユートピアとする市場原理主義でもなく、市場の廃絶をユートピアとする中央計画型社会主義でもない。
2014年6月20日金曜日
ムーディーズの格付けの正否は今後の課題
日本の格付け機関も、「ジャパンースタンダード」の「損失後利回り曲線」を前提にして格付けを行っているので、「ジャパンースタンダード」の「発行条件曲線」と対称になっており、理論的に正しい格付けを行ってきたといえる。したがって、米国と日本の格付け機関はそれぞれ異なる「スタンダード」を取っているために格付け結果が異なってくるが、理論的にはどちらも正しい格付けを行っていることになる。
格付けは将来のデフォルド率を見通して行うわけであるから、今後、日本のデフォルト率が米国並みになるとすれば、現在行っている米国の格付け方式「アンプロースタングート」は正しいということになる。一方、日本国内では今後も社債についてはデフォルトが発生しないような市場運営が行われていくとすれば、「ジャパンースタンダード」による格付けが正しいことになる。米国のスタンダードがやがて世界を席巻することになれば、それが「クローバルーズタングート」になり、日本の「ジャパンースタンダード」はローカル基準になるであろう。あるいは、ユーロ地域やアジア地域などが独自のスタンダードを切り開いていくことになれば、「アンプロースタングート」も一つのローカル基準として受け入れられることになるであろう。
以上のことからわかるように、ムーディーズが日本企業の格付けを正しく行っているというためには、今後、日本の社債市場のデフォルト発生率が「アングロースタンダード」の高さに上昇することが必要である。これまでの日本の社債については、適債基準や償還についての社債優先の考え方があって、ほとんどデフォルトが発生しないように運営されてきた。日本の格付け機関はそのような実態を反映してこれまで格付けを行ってきた。しかし、日米円・ドル委員会による金融市場の規制緩和や市場経済化の進展、ビッグバンの実施などによって日本の企業環境は急速に変化しているので、今後も低いデフォルト率を維持できるかどうかはわからない。
図3に示したように、ムーディーズは一九八八年に日本企業三七社を格付けした。八八年の欄にあげた十年デフォルト率は、格付け後十年間のそれぞれの格の平均デフォルト率で「アングロースタンダード」、つまりアメリカにおけるデフォルトの数値である。デフォルトが少ないという当時の日本の実状を反映して、すべてがBaa以上の投資適格の範躊に入っている。十年後の今年一九九八年には、Baa債券は平均デフォルト率が五・〇二%であるので一〇〇件のうち五件がデフォルトになるはずであるが、格付け件数が少ない(三件)ので、統計的にこの格付けが正しかったかどうかを判定することはできない。
一九九三年にムーディーズは一九七社の日本企業を格付けした。五年デフォルト率は格付け後五年間の平均デフォルト率を表し、「アンプロースタングート」で表示している。Baaの五年平均デフォルト率は二・〇六%(十年デフォルト率より期間が短いのでデフォルト率も低くなっている)であるから、六四件のうち一・三件のデフォルトが発生する確率である。同様に、Baの平均デフォルト率は一一・五一%なので、二六件のうち三件のデフォルトが九八年までに発生すれば格付けが正しかったといえるであろう。
格付けは将来のデフォルド率を見通して行うわけであるから、今後、日本のデフォルト率が米国並みになるとすれば、現在行っている米国の格付け方式「アンプロースタングート」は正しいということになる。一方、日本国内では今後も社債についてはデフォルトが発生しないような市場運営が行われていくとすれば、「ジャパンースタンダード」による格付けが正しいことになる。米国のスタンダードがやがて世界を席巻することになれば、それが「クローバルーズタングート」になり、日本の「ジャパンースタンダード」はローカル基準になるであろう。あるいは、ユーロ地域やアジア地域などが独自のスタンダードを切り開いていくことになれば、「アンプロースタングート」も一つのローカル基準として受け入れられることになるであろう。
以上のことからわかるように、ムーディーズが日本企業の格付けを正しく行っているというためには、今後、日本の社債市場のデフォルト発生率が「アングロースタンダード」の高さに上昇することが必要である。これまでの日本の社債については、適債基準や償還についての社債優先の考え方があって、ほとんどデフォルトが発生しないように運営されてきた。日本の格付け機関はそのような実態を反映してこれまで格付けを行ってきた。しかし、日米円・ドル委員会による金融市場の規制緩和や市場経済化の進展、ビッグバンの実施などによって日本の企業環境は急速に変化しているので、今後も低いデフォルト率を維持できるかどうかはわからない。
図3に示したように、ムーディーズは一九八八年に日本企業三七社を格付けした。八八年の欄にあげた十年デフォルト率は、格付け後十年間のそれぞれの格の平均デフォルト率で「アングロースタンダード」、つまりアメリカにおけるデフォルトの数値である。デフォルトが少ないという当時の日本の実状を反映して、すべてがBaa以上の投資適格の範躊に入っている。十年後の今年一九九八年には、Baa債券は平均デフォルト率が五・〇二%であるので一〇〇件のうち五件がデフォルトになるはずであるが、格付け件数が少ない(三件)ので、統計的にこの格付けが正しかったかどうかを判定することはできない。
一九九三年にムーディーズは一九七社の日本企業を格付けした。五年デフォルト率は格付け後五年間の平均デフォルト率を表し、「アンプロースタングート」で表示している。Baaの五年平均デフォルト率は二・〇六%(十年デフォルト率より期間が短いのでデフォルト率も低くなっている)であるから、六四件のうち一・三件のデフォルトが発生する確率である。同様に、Baの平均デフォルト率は一一・五一%なので、二六件のうち三件のデフォルトが九八年までに発生すれば格付けが正しかったといえるであろう。
登録:
投稿 (Atom)