何人かで記念写真を撮ったとき、一人でも目をつむった人がいると、本人だけでなく、いっしょに写った全員が浮かない気分になります。昔の写真屋さんは、木製の三脚の上に載った四角い暗箱カメラをのぞき、頭から黒い布をかぶってピントを合わせると、おもむろに丸いゴムの玉を握り、「ハイ、鳩が出ますよ」といってシャッターを切ったものでしたが、彼らはみな集合写真を撮るときに一人の目もつむらせない撮影技術を持っていました。
あの四角い黒い箱の写真機で使っていたのはフィルムではなく、乾板と呼ばれる感光乳剤をぬったガラスの板です。乾板は感度が低かったので、その特徴を利用して、集合写真を撮るときに二分の一秒とか一秒のスローシャッターを切ってやると、誰かがタイミング悪く瞬きをしたとしても、せいぜい数分の一秒のことですから、結果的に全員バッチリ目を開いている写真が撮れるのです。
もちろん、当時もフィルムはありましたが、ネガになったガラスの乾板はご芯を尖らせた工ンピツで修整を加えるのに便利だったのです。たとえば、顔のホクロはネガには白く写ります。ここをエンピツでチョンチョンと叩いて肌の色と同じにしてやれば、プリントではホクロは消えているというわけです。皺など一発でスベスベ肌になります。痩せている人はふっくらと、太った顔はほっそりと、目許も鼻筋も自由自在に修整できます。現在はパソコンを使ったデジタル加工が主流のようですが、この修整という作業は、いまでも街の写真館では大切な技術の一つです。まったくの別人にならない程度なら、お見合い写真にも役立ちます。
いまはフィルムの感度もよく、シャッタースピードも速いので、集合写真を撮ると、必ず一人や二人は目をつむっています。よほどシャッターを押すタイミングがよくなければ、全員がバッチリとはゆきません。結婚式場の専属カメラマンが記念の集合写真を大型カメラで撮ったあと、中型カメラで何枚もおさえているのは、高い写真代をいただく手前、一人でも目を閉じられたらアウトだからです。一対一で撮っていても、半眼や三白眼どころか、完全に目をつむった写真になってしまうこともあります。一度、瞬きをした瞬間にシャッターが合ってしまうと、同じことがつづくということも、ままあることです。そんなときは、レンズを替えたり場所を変えたりして再スタートするしかありません。
女優さんたちのように、写真に撮られ慣れている人たちは、いったん目線を下に向けてからパッと顔を上げてポーズをつくります。自分の顔がいちばんきれいに見える向きや角度、目線の高さなどをよく知っているからです。ですから、そんな機会があったときは、顔を上げた瞬間、瞬間にシャッターを切るようにしてあげましょう。ある大女優さんを撮ったときのこと、彼女がパッと決める顔が、どうもいまひとつです。彼女がパッと顔を上げポーズをつくる、撮る、目線と顔を下に落とす、この落とす直前の顔のほうがずっといいと思ったので、パッと顔を上げても撮らずにいると、そのまま目線を中空に浮かしています。
2012年12月25日火曜日
人工授精によって受胎する
排卵誘発剤でたくさんの排卵を起こさせ卵子を採る沁痛と危険も、そのために支払う金額も時間も、さらに(幸運にも)生まれ出た子どもの身体への不安も、それほどたやすいものではないのに、いつも不妊は不妊、子持ちは了持ち、に財皿いは絶対にわかりあえないと分断される。もっと二分でなく、例えば不奸の娘を持つ親のな場だとか、不妊だけど治療(生殖技術)をしてまで妊娠はのぞまない立場だとか、子持ちでもう子どもは欲しくないのに妊娠しやすく悩み深い立場とか、それに不妊治療医、あるいはそうでない産科医など、いろんな立場の人が集まって、もっと自分の知り得た範囲の情報を交換し合う。そんな場があれば、今のようにみんながそれぞれに際限なく自分の立場以外に見えなくなることもなくなると思うのだが。
この代理母という方法では、さらに三つの重要な問題が浮かび上がる。一つは金持ち女性が貧しい女性の身体の機能を、お金で買うこと。あまりはっきりとは映さなかったが、この番組でも代理母となったアメリカの女性たちの住居は決して豊かなたたずまいではなかった。反対に依頼人たちは、全米でも屈指の資産家揃いであった(番組で登場したある斡旋業者の男性は「韓国やフィリピンの女性を使えばもっと安くなる」と話し、彼の所には、それらの女性の顔写真カタログと電話一本だけがあった)。
金で買われた貧しい女性たちの子宮は、当然ながら大切にされるのは彼女たちの「生産物だけ」である。借金返済のため、代理母として妊娠中、妊娠によって悪化したと考えられる心臓病で亡くなった若い女性の場合、花一輪のねぎらいさえなく、妊娠八ヵ月の依頼人夫婦の「子ども」の遺体も、もちろん引き取られてはいない。
二つ目は、生まれた子どもに何らかの障害があった場合である。その番組の中でも、エイズーウィルスの感染が予想された赤ちゃんの出生について取り上げられていた。その子は無事出生したが、依頼人夫婦からも代理母からも引き取りを拒否され、七ヵ月間施設のベッドにあずけられていたというo結局ヽ代理母のおばが引き取ったがヽ自分たちの力によって誕生した生命の重さを、この人たちはどのように考えているめだろうか。三つ目は、親権の問題。代理母と依頼人双方が親権を主張した場合として、すでに「ベビーM事件」が一九八七年にアメリカで争われた。
この事件の代理母となった女性は第一の方法で、つまり卵子を提供し、人工授精によって受胎し、出産したため、アメリカでも結局のところ明確な法律判断はできないまま依頼人夫婦に軍配があがったが、そこには子ども(卵や精子の状態でも)をお金で売り買いすることがそもそも許されるのだろうか、とか、子どもを実際に出産した身体の持ち主が親と認められていいのではないか、とか、大変難しい問題が含まれている。「Mちゃん」という子どもにとって、一番幸せなのはどういう状態なのだろうか。
この代理母という方法では、さらに三つの重要な問題が浮かび上がる。一つは金持ち女性が貧しい女性の身体の機能を、お金で買うこと。あまりはっきりとは映さなかったが、この番組でも代理母となったアメリカの女性たちの住居は決して豊かなたたずまいではなかった。反対に依頼人たちは、全米でも屈指の資産家揃いであった(番組で登場したある斡旋業者の男性は「韓国やフィリピンの女性を使えばもっと安くなる」と話し、彼の所には、それらの女性の顔写真カタログと電話一本だけがあった)。
金で買われた貧しい女性たちの子宮は、当然ながら大切にされるのは彼女たちの「生産物だけ」である。借金返済のため、代理母として妊娠中、妊娠によって悪化したと考えられる心臓病で亡くなった若い女性の場合、花一輪のねぎらいさえなく、妊娠八ヵ月の依頼人夫婦の「子ども」の遺体も、もちろん引き取られてはいない。
二つ目は、生まれた子どもに何らかの障害があった場合である。その番組の中でも、エイズーウィルスの感染が予想された赤ちゃんの出生について取り上げられていた。その子は無事出生したが、依頼人夫婦からも代理母からも引き取りを拒否され、七ヵ月間施設のベッドにあずけられていたというo結局ヽ代理母のおばが引き取ったがヽ自分たちの力によって誕生した生命の重さを、この人たちはどのように考えているめだろうか。三つ目は、親権の問題。代理母と依頼人双方が親権を主張した場合として、すでに「ベビーM事件」が一九八七年にアメリカで争われた。
この事件の代理母となった女性は第一の方法で、つまり卵子を提供し、人工授精によって受胎し、出産したため、アメリカでも結局のところ明確な法律判断はできないまま依頼人夫婦に軍配があがったが、そこには子ども(卵や精子の状態でも)をお金で売り買いすることがそもそも許されるのだろうか、とか、子どもを実際に出産した身体の持ち主が親と認められていいのではないか、とか、大変難しい問題が含まれている。「Mちゃん」という子どもにとって、一番幸せなのはどういう状態なのだろうか。
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